…10月の西安…

募集活動に変化 

 昨年あたりから、西安の募集活動に変化が見え始めた。迷惑にも、同業で中国沿岸部に本拠地を置く国内大手企業数社が、西安に事務所を開設して1000人単位の新規採用を始めたのである。それに、有名大学では大学院への進学率が高まり、就職希望者が減ってきた。西安も騒がしくなってきた。

 活動しなくても数百人が応募してきていたのは、2年前までの話だ。

 危機感を感じて、僅かだが募集費の予算を組んだ。それは、人気サイトへの募集広告掲載と大学内での会社説明会開催の費用だ。だが、これだけでは十分ではないようにも思えてくる。そこで、専門会社から詳しい状況を聞かせてもらうことにした。

来社した担当者の話によると、「採用人数と採用する企業が増えたことで、学生たちが就職活動をしなくなった。今年は、企業自らが動かないと学生が集まらない。」であった。リクルート会社の宣伝文句のようにも聞こえるが、頷ける部分もある。費用だけでも訊ねてみることにした。

有名リクルート会社は、募集活動一式で請け負うとのことであった。チラシやポスター、会社案内などの印刷から、大学内での募集広告掲示、学生の勧誘、会社説明会開催や筆記試験まで含めたものだ。その費用はベラボウで、中小企業ではとても利用することはできない。



 

 

 

 


募集活動の準備

 今年の募集活動準備は、5月のホームページ全面改修から始めた。少し遅れて、会社プレゼンテーションの改修も並行して進めてきた。9月中旬に両作業が完了、就職人気サイトへの募集広告掲載と大学へ会社説明会の開催を申し込む。


 9月下旬には、多くの学生が応募してものと期待していた。しかし、それほどでもない。どうしよう?次の手を何か考えなければ。


 大学内での開催を考えれば、ポスター貼りとチラシ配りが最も有効な手段に思える。だが、有名リクルート会社は、この様な単品注文は受けてくれない。親切な中小の会社を探してみることにした。


 開設したばかりの会社が見つかった。我社が初めての客で、費用も特別価格でやってくれるという。ありがたい。早速、ポスターとチラシの印刷準備に取り掛かる。

 


 



 第一回会社説明会開催
  

昨年の反省から、開催日を1ヶ月早めて10月中旬に第一回会社説明会を開く予定だ。第一回は、人気サイトへの募集広告を見て応募してくる学生が対象だ。応募書類を審査して、開催案内を発信する。


希望人数は60名だが、毎年来ると言っていても来ない学生も25%程度はいる。それを見込んで多めに声をかけてはいる。はたしてどうなるのか?数日前に行われたIBMの会社説明会では、参加者が20名程度だったと聞く。不安だ。


開催当日には、その不安は大きくなっていた。朝礼で「参加者が1人になっても全力で頑張ろう。」と言ってしまった。不安は極限状態に達していた。
開会30分前に受付を始める。会場には日本で人気の音楽が流れる。アップテンポの曲に、参加者の気分は盛り上がっている。しかし、社員の方はもう一つ乗っていない。


 定刻に説明会を始める。気にしていたIBMの人数は超えていた。我社の魅力を精一杯アピールしていこうと、全員で気を引き締める。会が進むにつれて、参加者の眼が輝き出した。バージョンアップしたプレゼンテーションが成功している。あくびをする者、居眠りする者、下を向く者は一人もいない。


 参加者の感想文には、「人材を大切に考えている会社。社長が参加するほど採用を重視している会社。IT技術者としての将来が見えてきた。素晴らしい雰囲気の会社説明会。」などと、狙い通りの内容が書かれてあった。これで、大学内説明会へ弾みがついた。

 

 



大学内での会社説明会 

 10月下旬に、2校の大学で会社説明会を開く。西安でNo.1、No.2と呼ばれている大学だ。これらの大学へは、中国各地から大手企業が募集のために数多く集まってくる。我社のような小企業が開催するのは大変珍しいそうだ。


 開催日の前日に現地調査に出かけた。会場近くでHITACHIの文字を見つけた。中国でも人気企業だ。学校関係者に日立の参加人数を訊ねてみたところ30名だった。この人数から我社の人数を予測すると、1名がやっとといったところになる。心配になってきた。


この日、説明会が開かれていた会場を外から覗いてみた。どの会場も3名から10名といったところ。心配は増すばかりである。リクルート会社と連絡をとり、最後の試みを依頼した。それは、多量のポスター貼りと学生食堂でのチラシ配りによる直接勧誘だ。


 開催日に大学を訪れると、あちらこちらで我社のポスターを目にする。リクルート社の頑張りに感謝する。会場準備で問題が発生、プロジェクターが壊れて使用不可状態。大丈夫、こんなこともあろうかと、担当者がプロジェクターを持参してきている。

 次の問題が発生、マイクの調子が悪い。これはどうすることもできない。学生たちの近くに寄って大声で話すしかない。ちょっと待てよ、そうなると演台がないことになる。つまり、私のスピーチ原稿を置く場所がない。衝撃が走る。出番まで残り15分。機能低下した脳に、可能な限りの情報を送り込んだ。


 参加者が集まり始めた。開始時刻には、HITACHIの人数を超えていた。ポスターとチラシの効果だろう。何事も、必死になればなんとかなるものである。


 1日置いて次の大学での開催になる。市街地にあって、西安で最も多く説明会が開かれる大学だ。リクルート社が残っていたポスターを持ち込んで、会場までの道沿いにこれでもかと貼ってくれていた。迫力を感じる。会場準備も、今回特別に持ち込んだ無線マイク2台の接続がOK。これで、動きながら格好良くスピーチができるはずだ。


 予想外の人気で、開会時の参加人数は80名、暫くして100名を超えた。学校関係者が不思議がるほどの人数である。全員が燃えた。スピーチにも熱が入り、学生たちの反応も上々。有名大学だけあって筆記試験の点数も上々で、採用予定人員4名を確保できた。

 

…11月の西安…


 合同企業説明会へ参加

 西安ソフトウエアパークが主催する合同企業説明会に参加した。昨年までの様子とは違っていた。参加企業数は倍に増えたが、馴染みの日系企業の社名が消えていた。日本の景気が影響しているのだろうか?それとも、既に人員を確保したのだろうか?仲間がいなくなったのは寂しい。


 予定した数の応募書類を受け取ったところで引き上げることにした。我社が一番と思っていたが、既に日系大手企業の姿はない。同じことを考えていたようだ。


 帰社後直ぐに書類を審査、2日後に予定している会社説明会の案内を発信した。これが、今期最後の
募集活動になる。




 


今期最後の会社説明会

 会社説明会も4回目となると慣れたもので、指示しなくても会場準備が進んでいく。ブラリと隣の待合室を覗いてみると、見覚えのある顔で溢れている。出席率は高くなりそうだ。


 今回、初めての試みとして社員の家族を招待した。家族の方々に、もっと会社を知ってもらいたいのと、子息の活躍振りを見て欲しいと思ったからだ。結果、家族の方たちに大いに喜んでもらえた。これからも家族の招待を続けていきたい。


 筆記試験の点数は、この時期まで就職が決まらなかった学生だからと期待していなかった。
ところが、高得点者が数人いたのである。これは嬉しい誤算だ。上位5名の面接試験を行ない、1名を採用内定者に加えた。


 

 

 



今年の目標「応募者の資質レベルアップ」を振り返る

 
 募集活動が終了したところで、今年の目標「応募者の資質レベルアップ」について振り返ってみた。リニューアルしたホームページの効果で、会社の経営方針を理解した応募者が増えた。また、会社説明会用プレゼンテーションの改修によって、入社したいと強く希望する応募者が増えた。結果、目標にしていた資質レベルは大幅にアップしたのである。苦労した甲斐があった。


 次に、会社説明会への参加人数を増やしてくれたのは、リクルート社の協力があったからだ。参加者の中に、ポスターやチラシを見てやって来た学生も多い。来年の募集も、今年と同じような募集方法になるだろう。


 リクルート社との反省会で、来年は大学側と協力して何かイベントを企画してはどうかということになった。大手企業は自社商品の宣伝を兼ねて、面白いイベントやゲームをやっているらしい。コンピュータ・ソフト屋に何が出来るのか?来年は、この課題に取り組んでみるつもりだ。




 企業内実習の座談会

 
 大学から来ていた学生の企業内実習が終わり、大学・学生・企業が集まっての座談会が開かれることになった。企業側の代表として、何か話をしてくれないかと頼まれた。
どんな話が相応しいのか?一般的には当たり障りのない話で済ませているようだが、私にはどうしても話したいことがある。思い切ってぶつけてみることにした。


 第一は、言葉の勉強をする前に日本文化の勉強をしてほしい。具体的には、相手の立場に立って物事を考える、恩・義理・人情の考え方、和の心を持つといったことだ。

 第二は、日本人と本当に話したいと思うなら、マナーや身だしなみの勉強をしてほしい。
この様な話をすると不機嫌な顔をされると思っていた。しかし、半数以上の出席者の方が真剣に私の話を聞いてくれていた。中には、大きく頷きながら聞いてくれた人までいたのである。


 数日後、大変なことになった。大学から、日本文化について講演して欲しいと頼まれた。これには参った。余計なことを話さなければよかった。

 


…12月の西安…


今回の日本帰国は

 
 今回の日本帰国は、 昨年9月に入社した社員2名が同行する。赴任する社員が同行するのは初めてのことだ。無事な旅でありますようにと祈る。その訳は、一人で移動する際には全くトラブルが起きてないが、誰かが一緒だと必ずどこかで足止めされてきた。嵐や霧によるものだ。


 出発日の朝、カーテンを開けると外は真っ白。濃霧発生である。不吉な予感はしていたが、なんでこんな日にと思う。神様は意地悪だ。同行する社員にとっては、初めての飛行機、初めての外国なのに。


 西安オフィスを出発して、直ぐに交通渋滞に巻き込まれた。濃霧による高速道路の閉鎖だ。それでも市内を迂回しながら、なんとか空港までは辿り着いた。次は、チェックインの際に出発時刻を確認すると、「未定」だと言われた。

「未定」とはどういうこと?成都から来る便が私たちの乗る予定の便になるとかで、その便がまだ成都を出発していない。何時になるか分からないから未定だと言う。


 経験からすると、今夜は上海泊まりになりそうだ。以前、9時間も西安空港で待機したあげく、深夜になって西安オフィスへ引き返したこともあった。この時も、本社の社員が一緒だった。こんな日は、まず腹ごしらえをしてから静かに待つしかない。


 食後のコーヒー・タイムに、「2時間半遅れで出発する。」のアナウンスが流れた。出発時刻から上海到着時間を計算すると、ギリギリ乗り継ぎ便に間に合うかもしれない。間に合わなければ、上海の夜を楽しめばよいだけのこと。最近では、考え方まで変わってきた。


 上海空港で懸命に走る。乗り継ぎ者カウンターへ行き、大声で「中にある出国手続カウンターを通して。」と頼み込んだ。時間が少しでも短縮できるからだ。空港スタッフを伴い再び走る。結果、岡山便に間に合った。この日の経験から、努力すればご褒美が待っていることを知った



今年の目標「日本文化と日式の考え方教育」を振り返る

 
 日本滞在中に、現在中国で活躍されている社長さんたちのドキュメンタリー番組を見る機会があった。中国で20年以上も事業をやってこられた社長さんたちが主役のテレビ番組だ。共通した話は、
「お互いに、お互いの国の文化や考え方を理解することが大切。」であった。


 文化や考え方が理解できていなければ、言葉が通じてもお互いの意思や考え方を通じ合えるはずはない。理解不足から誤解やトラブルが発生して、顔も見たくないといった最悪の結果を招くこともある。


 中国事業をロングレンジで考えない日本人は、この時点で中国から引き上げていく。出演された社長さんたちは、ロングレンジで事業を考えておられた。苦労しながらも、中国人社員に対する日本文化や日式の考え方の教育に取り組んでおられた。その努力があって、現在の成功があるのだと心から思う。


 この考え方は当社も同じで、社員の日式教育に挑戦を続けている。今年から、社員との対話時間を大幅に増やした。身近で起きた出来事などを分析して、詳細に理想的な考え方を教えていく。この教育を続けなければ、中国事業の将来は無いと考えている。


 今年1年を振り返ってみて、西安スタッフの頑張りと社員の努力に拍手を贈りたい。

 

 

 

 

 

 

玉収集のその後-8

 
 玉収集のその後-8 (撮影予定:伎楽飛天×5、舞姫、女官、母子、観音)馴染みの骨董店の主人が、「好きな伎楽飛天が入ったが、どうする?要らないなら、欲しい客がいるのでそちらに廻すけど。」と言ってきた。

 弱いところを強烈に突いてきた。「直ぐに行くから。」と返事するしかない。
登場してきた飛天は、「これ以上の品は世界中どこを探してもない。」と言えるくらい見事な品であった。鳥肌が立ち、体の震えが止まらない。二人の天女が絡み合ったデザインは、例えようもなく美しい。絶対、他人に渡してなるものか。


 以前収集した、4体が1組になった伎楽飛天と比較してみた。どちらが素晴らしいと決めることはできない。いずれが菖蒲か杜若である。眺めていると、飛天たちと天空を舞っているような気分になってくる。優雅で淑やかな女性たちだ。
姿からは、艶っぽい可愛さまでが感じられてくる。


 唐代の仏教美術品に興味を持ち、玉の立体曼荼羅を収集しようと頑張った時期もあった。しかし、気に入った品を見つけることができずに終わってしまった。この種の品は数が少ないからだ。


 女性たちが主役になった収集品も並べてみた。時代によって顔や姿に違いがある。時代ごとに、理想の女性像が変化しているからであろう。戦国時代は可愛さ、漢代は聡明さ、唐代には淑やかさ、明代は優しさが求められていたように感じられる。疑問が湧いてきた。現代は女性に何を求めているのか?逞しさなのか、それとも妖艶さなのか?


 話は飛ぶが、日本の「なんでも鑑定団」で、中島先生が「この3年で、中国骨董品が20倍の値上がりをした。」とおっしゃっていた。中国人が中国骨董品の価値を再認識したからである。ついに、恐れていた事態になった。西安の骨董品価格も高騰することだろう。


 また、「家で眠っている中国骨董品を高く買い取ります。」のテレビ・コマーシャルも流れていた。日本の業者が日本にある中国骨董品を買い集め、それを中国の業者が買い取っていくと思われる。


 買うには苦しい時期になったが、売るには楽しい時期になったとも言える。買うことを忘れ売ることだけを考えてみてもいいかもしれない。


 玉収集その後-9へ続く。

 

 

2011年の終わりに

 「高い目標を持ち、それに向かって挑戦していくことが進歩への道である。」 この話を、先輩たちから幾度となく聞かされてきた。その教えを思い出して、年頭に欲張った目標を立てた。2011年の終わりに、それらを反省してみることにした。


今年の目標は、

@文書を書く能力の向上、

A人前で話す能力の向上、

B英会話能力の向上、

Cビデオ撮影技術の向上の4つであった。

それぞれに少しだけ進歩はあったと思うが、決して満足できるものではない。努力が足りなかったと言われればそれまでだが、多くを望みすぎたせいもある。年相応の数にしておけばよかったと反省する。


 1年の終わりには、やはり達成した喜びを味わいたいものである。喜びが、次の年への挑戦意欲にもつながってくるからだ。2012年の目標は少なくすることを決めた。