…2016年の初めに…

 

 年の初めには、その一年をどう過ごすか目標を立てている。このところ年寄り的な傾向が強くなり、目標が達成できていない。楽をしたいと望んだことが間違っていたようだ。

そこで、2016年は思い切り若返り「先頭に立って走る。」に決めた。途中で息切れしないか心配ではあるが。

 

 

 



 …2016年1月の西安…

 

 元旦から工事

 西安オフィスの台所、洗面所、風呂場の3ヶ所に設置してある照明具の調子が悪くなった。いずれもパナソニック社製で、中国で製造された古いタイプの器具だ。蛍光管を交換したのが悪かったらしく、4,5日すると蛍光管が器具から外れてしまう。

 調べてみると、接続部の造りが違う。日本では考えられないことだ。外れるたびに脚立に登って直しているが、この状況が続くと思うと気がめいってくる。

 家主に照明具の交換を連絡した。すると家主から、「天井板が前から気に入らないので、この機会に板を交換したい。」と、思ってもみなかった返事が返ってきた。大がかりな工事になる。だが、気になっている上の階からの排水音と台所の喚気が改善できるかもしれない。そこで、費用按分を家主と話し合い、工事の準備に取り掛かる。

 この工事は業者任せというわけにはいかない。保管してあったクッション材を引っぱり出し、壁やドアをカバーしていく。次に食卓を移動して、ビニールシートと新聞紙を床に敷きつめて作業場所を設ける。残るは、照明具、喚気扇、排気ダクト、防音材とアルミテープといった器具と材料の調達だ。正月休みを返上しての工事になった。

 1月1日から工事を始める。中国製天井の撤去、排水管の防音、喚気ダクトと日本製天井の設置、照明具と換気扇の取り付けと工事を進めていく。工事人から聞いた話では、日本製の天井板が大人気で、休む暇もなく働いていると言う。この状況が続くと、地元の人から「日本による経済侵略」とまた言われるだろう。

 工事は1日の休みを挟んで5日間続いた。この間はまともな食事がとれていない。その効果であろう、努力しても減らなかった体重が3kgも減った。

 

 

 

 



 

 西安は大雪

 春節休暇の混雑を避けて、1月最後の土曜日に西安へ移動した。翌朝は大雪、気温も−10℃以下と厳しい冷え込みだ。もし今日移動していたら、間違いなく上海で足止めされていただろう。今年はめぐり合わせが良い年かもしれない。

 外を眺めていると、雪を被った西安城壁が頭に浮かんできた。じっとしてはおられず、雪が舞う中をしっかりと着込んで城壁へ向かった。到着すると、一眼レフを手にした写真マニヤ達が大勢集まっていた。

 どの顔も興奮気味で、あちらこちらからシャッター音が聞こえてくる。私も、普段とは違う城壁の姿に魅せられて撮影を始めた。だが、20分もすると足先が氷のように冷たくなり、敢え無くギブアップ。年寄りには、雪よりも熱い風呂の方が似合うということだ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …2月の西安…

 春節休暇の楽しみ 

 春節休暇は7日間あり、のんびり過ごしたいところだ。しかし、スケジュールはびっしり。一番の仕事は、西安オフィスの整理・整頓・清掃だ。このところ、本社から出張者が来るたびに、部屋に置いてある段ボール箱が行ったり来たりする。箱の数も増えていくばかりで、これをなんとかしなければならない。

 西安では買物すると粗品が付いてくることが多く、自然と物が貯まってくる。そこで、今回だけはもったいない精神を忘れて、これらを廃棄していく。それと、普段できない風呂場の目地やタイルの清掃もしたい。

 そんな休暇スケジュールだが、2月8日の元旦だけは空白にしておいた。それは、西安オフィスに近い「大唐芙蓉園」へ行ってみたいと思ったからだ。外国人は入場料無料というのが理由だ。  入口付近から大勢の人で、園内も春節の催しなどで賑わっている。来訪者の服装から判断すると、春節休暇を利用して西安へ来ている観光客がほとんどだ。西安滞在が長くなると、服装で出身地が分かるようになる。

 園内を一周したところで気温が急降下、迷わず茶館へ飛び込む。暖かい部屋に座り、中国茶を飲みながら窓越しに春節の雰囲気を味わう。老人ならではの楽しみ方であろう。外国人に対する思いやりの心に感謝しながら、午後の一時を過ごした。


 

 

 

 馴染みの骨董屋が

 馴染みの骨董屋が、大唐不夜城の中に新しく出来た「骨董城」へ引っ越してきた。知り合った頃の彼の店は、古い骨董市場の中の小さな店だった。店主とは3年近く会っていない。この間の付き合いは、彼から送られてくるメールに添付された骨董品の写真を眺めるだけだった。顔が見たくなり、店を訪ねてみることにした。

 すっきりした髪型とお洒落な服装で、骨董城の玄関で出迎えてくれた。その様子からすると、商売は繁盛しているようだ。骨董城は建物全部が骨董店で、300店舗程が入居するらしい。  彼の店は玄関近くにあった。店の面積は6倍、展示品は4倍にも増えていた。それに、埃を被った商品が見当たらない。ここまで綺麗になると、骨董マニヤにとっては掘り出し物を探す楽しみが無くなったように思えてくる。

 お茶テーブルへ案内され、鍵が掛った戸棚と金庫から秘蔵品が次々と目の前に並べられた。様子は以前と変わらない。ここで、「今日は、君に会いに来ただけだ。」と独り言。しかし、彼はマイペース、仕方なく講釈を聞きながら作品を眺めた。小さな作品ばかりだ。店主に訊ねると、最近は、興奮するような作品が出てこないと言う。値段の方は1.5倍程度の値上がりだけで、恐れていたほどではない。そのことを彼に伝えると、古いお客様だから特別なのだと言う。ゴマすりまで上手になった。

 店主の話によると、玉に対する中央政府の考え方が変わり、玉器の海外への持ち出しや国内への持ち込みを自由にしようという動きがあるようだ。この背景には何があるのか、中国人になって考えてみる。すると、中国にしかない玉文化を世界に広めていきたいという政府の野望が見えてきた。

 最近発刊されたオークション雑誌にも、アメリカ人、イギリス人、日本人などの持主に関する情報が記載されるようになった。以前には無かったことで、この動きは確かかもしれない。そうだとすると、玉文化は世界に広まり、玉は再び値上がりする。休止している玉収集を再開すべきか、悩みが始まった。




 

 

 

 


 …3月の西安…

事務所移転の検討を始める

 突然、イギリス系不動産仲介業者が会社へ訪ねてきた。縁のない会社だが、入居中のビルが2017年に他社へ売却されることが決まっている。そうなると、移転も選択肢の一つになる。そこで、話だけでも聞いてみることにした。

 イギリス系だけあって、マナーや話し方はスマートだ。「何故当社へ?」と訪問の動機を訊ねると、入居中ビルの不動産部から薦められたのだと言う。不動産部は新しいビルを建築中で、そのビルの入居者募集をこの会社へ委託したそうだ。

 設備内容を聞くと、西安にはこれまで無かったOAフロアー、断熱ガラス、湯騰室を設備し、エレベーターも日本で製造された三菱社製だ。建築に際しては、不動産部が昨年西安の東に建てたオフィスビルのノウハウが生かされていると言う。その建築には、上海にある日系の設計事務所が係った。西安では考えられない湯騰室の謎が解けた。

 場所は、数年の内には高新技術産業開発区の中心になる一等地だ。西安市はこの地区に力を入れていて、国際ビジネス街にしようと目論んでいる。地下鉄工事も進められていて、隣に駅ができる。

 3月中旬に現地調査を行った。早い時期に契約してくれると、今と同じ家賃で3年間据え置くという条件まで提示された。本気で調査しなければ。ヘルメットをかぶり、工事用エレベーターで10階まで登る。

 10階から上は家賃が高くなるので、登るのもこの階までになる。外観デザインを重視して建てられたビルで、四角い部屋がない。それに、窓際には太い柱が数本。オフィスレイアウトが難しそうだ。結論は保留にして、この日の調査を終えた。


 

 

 入社前に日本語研修を

 


 昨年10月から、試験的に採用内定者1名を受け入れて実習を行ってきた。結果は上々で、入社前に日本語研修もやろうということになった。内定者たちに連絡すると、喜んでいる様子だ。そこで、大学の授業がない3月と4月、卒業後の7月と8月に入社前日本語研修を行なうことにした。

 3月の研修成績をみると、女性が「優」で男性は「ギリギリで良」といったところだった。会話の勉強は、多くの時間をかける真面目さとお喋り好きな点で女性に有利なようだ。男は横着で無口な人間が多いから困ってしまう。

 会話で一番大切なことは、正しい音を出すことだ。音が正しくなければ相手に正しく伝わらない。それに、会話から知性が感じられないからだ。正しい音を出すための口の形を繰り返し指導した。




 

 

 

 


 西安の春を見つけに

 西安の春は、例年岡山よりも2,3週間早くやって来る。3月中旬には最高気温が20℃を超え、半袖姿の人を見かける。だが、今年は違っていた。12日に西安へ移動したが、真冬のような寒さで、その後も気温は下がる一方だ。

 そんな中、早く春を見つけたいと出かけてみた。最初に見つけたのは城壁のモクレンだ。桜よりも早く咲き始める花で、西安では街路樹として多く植えられている。清楚な白色が大好きだ。次に見つけたのは山桜で、初めて訪れた華山で山全体をピンク色に染めていた。日本では少なくなってきた風景である。

 3つ目の春は、帰国前日の25日になってやっと咲いてくれた白色の八重桜だ。曇り空ではあったが、薄緑かかった白色が綺麗だった。天気予報では、明日からは晴れて気温が急上昇するらしい。神様は意地悪だ。



 

 

 

 

 

 

 

 …4月の西安…


 玉のアクセサリー店がオープン

 

 中国国内の玉人気は高まるばかりである。日本の真珠と似ていて、上品さや温もりが玉の魅力だ。その玉を使い、各自の好みや予算に合わせて、アクセサリーをアレンジしてくれる店が西安オフィス近くにオープンした。

 店を覗いてみると、西安ではこれまで見たことがない内装がされていた。日本の京都にいるような気さえしてくる。姉妹二人で開いたお店で、妹が内装を手掛けたという。日本が好きで、日本のデザインと雰囲気をベースに考えたそうだ。ゴテゴテ感がない。壁の飾り物も日本風で、手作りしたそうだが見事な出来栄えだ。

 ショーケースや棚には、姉がアレンジしたネックレス、イアリング、ブレスレットなどが並べられている。玉器店で売られているような野暮な品ではない。玉は権威の象徴として考えていただけに、この店の玉の使い方には驚かされる。玉の魅力が何倍にも増しているように思えてくる。高価な玉をビーズなどと組み合わせることで、手頃な価格に抑えているところも素晴らしい。この店、繁盛すること間違いなしだ。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …5月の西安…

 

 海外事業部長が3度目の西安出張

本社の海外事業本部長は、用事を見つけては西安へ行きたがる。西安にいると気持ち良く仕事ができるらしい。社員は礼儀正しく、社内秩序は保たれ、まるで一時代前の日本の事務所にいるような気さえしてくると言う。これまで自分から行きたいと申し出てきた社員がいなかっただけに、本部長の気持ちは喜ぶべきであろう。そこで、5月のゴールデンウイークを利用しての西安出張を承認した。

 本部長の西安出張は今回で3回目になる。1回目は募集と採用活動への参加、2回目は西安へ来られる顧客の接待、そして今回は9月に入社してくる採用内定者との面談、休暇で帰国している社員の研修発表会参加、外注要員との面談などが出張の目的だ。日本語指導の社員を傍に置き、初日から楽しそうに仕事している。

 他社のことだが、西安で勤務する日本人が行方不明になる事件が過去に数件起きた。原因の一つに食事の問題がある。食事が合わないと気持ちが落ち込み、健康を害する。そうなると日本が恋しくなり、突然西安から姿を消してしまうといった事件だ。

 本部長は食事の点では全く問題ない。濃い目で辛い味付けの西安料理がピッタリなのだ。それに、今回の出張で四川料理まで好物にしてしまったから、完璧と言うしかない。また、人見知りしない性格も西安に合っている。彼のニコニコ顔が、西安人の日本人に対する警戒心を忘れさせてしまう。これは、誰にでもできることではない。生まれ持った彼の才能であろう。堅いばかりの性格の私には羨ましい限りだ。

 西安スタッフの優しい計らいで、本部長は好物の「北京ダック」を味わえることになった。彼は大喜び、「もう日本へ帰りたくない。」と大声まであげている。「北京ダック」の美味しさは認めるが、私は太ることを気にして数は3個までにしている。だが、本部長の場合は無制限、しかも回を重ねる度に数を増やしているから心配だ。



 

 

 

お茶屋さんへ案内 

 本部長が土産に「ジャスミン茶」を買いたいというので、馴染みのお茶屋さんへ案内した。ジャスミン茶の評価は、花の香りとベースになっている緑茶の質で決まる。茶葉には匂いを吸収する性質があり、それを利用して香り付けしていくのだが、その回数が多いほど香りが豊かになる。

 また、茶葉は成長した葉よりも新芽の方が美味しい。苦味や癖がないからだ。中国文化が凄いのは、香りを体内に取り込むという考え方である。他国の人では考えられない発想だ。

 試飲して茶葉を選ぶまでに10分。だが、その後の処理に時間がかかった。店主が領収証を発行できなかったからだ。領収証は、税務局とのオンライン処理で発行する仕組みになっている。使用するソフトウエアが変更になったばかりで、店主がその操作方法をマスターしていなかったのだ。

 客を巻き込んでの大騒ぎ。客からは、「使い方ぐらい勉強しておけよ。」と苦情。45分が経過してようやく動き始めた。一同感激の大拍手。

 安心したのも束の間、次のトラブルが発生。プリンターの中で領収証がグジャグジャ状態。これを取り出して押印するまでに10分、入店してからの時間は1時間を超えた。西安人が人と時間の約束をする場合には、必ず約束時間の後に「頃」を付ける。予定した時間通りにことが進まないからだ。皺くちゃになった領収証を受け取り、次の目的地へ急いだ。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

  …6月の西安… 

 事務所移転を決める

 西安の増員計画について検討してきたが、5月下旬に結論を出した。毎年4名の増員を行う。今のオフィスビルには空室がなく、増員計画に対応できない。そこで、同じ家主が建てているオフィスビルへ移転することした。3月に紹介したビルである。

 部屋選びだが、好きな部屋を選べるだけに迷う。大きな部屋で、増員分の机をどこに置こうかと悩むことなく、心穏やかに過ごしたいところだ。しかし、家賃がその計画を邪魔する。取りあえずは同程度の広さの部屋へ移り、状況を見ながら広い部屋に移るという計画にした。中途半端だが、経済的無理は禁物である。

 家主の温かい配慮により減額された保証金を振り込み、春先から検討してきた事務所移転問題を終わりにした。これからの悩みはオフィスレイアウトだ。部屋の3ヶ所にある太い柱をどの様に始末するかが大きな課題だ。知恵と工夫と努力で解決させるしかない。移転時期は来年3月下旬を予定している。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 …玉のお話-2…「玉はどんな石」

 

 「玉はどんな石ですか?」と訊ねられると、「宝石にはない魅力を持った石です。」と答えます。玉の魅力は、「神の光が宿る石」と呼ばれるように、神秘さや神聖さにあります。冷たいはずの石なのに温かさや潤いが感じられ、手の平に載せると心が落ち着き、気分まで和んでくるのです。中国では、古代から「玉は金銀にも勝る。」とされてきました。

 では、玉はどんな石か、具体的に分類から見ていきましょう。まず、採取される場所の違いによる分類から始めます。場所とは、山中、流水の中、下流の川床や川岸、砂漠の4ヶ所に分かれます。

 山中にあって自然の厳しさに晒されていない新しい石を「山料」と呼びます。綺麗さはありますが、潤いがないと言う専門家もいます。清代になってから使われるようになりました。山料が崩れて河に落ち、流水や自然の影響を受け始めると「山流水料」と呼ばれ、主に中流域で採取される大型の石です。山流水料は千数百万年をかけて川を下り、下流の川床や川岸へ辿り着きます。この間に、小さな石に分かれ、やわらかい部分は削られ、太陽に照らされ、水や空気の影響を受けて変化していきます。

 自然の厳しさと触れ合うことで石に光沢と質感が備わり、趣と味わいが感じられる石になるのです。この石を「仔料」と呼び、古い時代の玉器にはこの仔料が使われました。また、仔料が突然の洪水などで砂漠まで流されたり、河の流れが変わったりして、砂漠で時を過ごした石を「戈壁料」と呼び、仔料とは違った味わいを持つ石になります。

 次は、産地による分類です。北京オリンピックのメタルに使われた青海省の軟玉、陝西省の藍田玉、河南省の独山玉、遼寧省の岫岩玉などが有名です。良質玉の採取量が多いのは、新彊ウイグル自治区南部にある崑崙山脈一帯です。この地域には、白玉河、緑玉河、墨玉河といった玉名が付いた河まで流れています。

 特に有名なのが和田(ホータン)地区で、「和田玉」と呼ばれる優質玉が採取されます。そのため、和田玉は数千年間採取されてきました。今では原石は枯渇して、国から採取禁止令が出されました。NHKの特別番組でも放送されましたが、2003年に和田玉の原石価格は突然100倍に値上がりしました。和田玉の魅力が再認識されたのです。

 中国以外にも玉の産地があります。アフガニスタン、ロシア、パキスタンなどですが、いずれの国の玉石も中国産と比較すると玉質が劣ります。

  次は、色の違いによる分類です。色により、白玉、青白玉、青玉、碧玉、墨玉、黄玉、糖玉に分類されます。清純さから「白玉」が一番好まれます。白玉の中でも最上位にランクされているのが「羊脂白玉」と呼ばれる玉石で、透明度が高く、光沢があり、清純な乳白色で、温かさや潤いが感じられる純度の高い石です。採取量が少なく、とても高価です。

 白玉に少し色が入ると「青白玉」と呼ばれ、色合いによって違った趣が感じられます。色が濃くなると「青玉」と呼ばれ、産出量が多いため様々な玉器に利用されています。日本で人気の青磁は、青玉への憧れから生まれた磁器と聞いています。

 次は「碧玉」です。透明感は少なくなりますが、深い碧色や渋い緑色が魅力の玉石です。清代になってから多く使われるようになりました。「墨玉」は名前の通り真っ黒な墨色で、知性を持った石と呼ばれて古くから使われてきました。「黄玉」は黄金色で富を、「糖玉」は蜂蜜色で豊かさを求めて使われた玉石と思います。

 その他、軟玉、硬玉の分類が近年になって行われるようになりました。これまで登場してきた玉石は軟玉で、硬玉は翡翠を指します。中国での翡翠の歴史は浅く、清朝末期西太后が好んだことから使われるようになりました。

 台北の故宮博物院には、世界的に玉器として有名な「白菜」が展示されていますが、この材料は翡翠です。光沢は素晴らしいのですが、玉石が持っている温かさや潤いといったものが感じられません。翡翠は玉石ではなく宝石と言えるでしょう。

 玉石の分類を見てきましたが、同じように見えていても玉石は自然石、同じ石はありません。其々が世界にたった一つしかない石なのです。玉を手にしてみたくなったでしょう。