…玉のお話-3…「玉器の見分け方」
玉器の評価は、第一に玉材、第二にデザイン、第三に彫りで決まると言われています。オークションの落札価格をみても、玉材が60%、デザインが25%、彫りが15%といったところで、歴史的価値は日本ほど評価されていないように思います。
オークションで人気が高かった作品を参考に、玉器の見分け方について話を進めます。第一の玉材の評価は、純度、透明度、光沢、清純さ、温潤さで決まります。優質玉材とは、純度が高く、透明感と上品な光沢があって、清純な色合い、温かさと潤いが感じられる玉石ということになります。これら全ての魅力を備えた玉石となると和田産・仔料・羊脂白玉になりますが、どの玉石もそれぞれに素晴らしい個性と魅力を持っています。ただ、どの玉石であっても、清純さと温潤さは重視すべきでしょう。
玉質は、ペンライトで光を当てると確認できます。光の透り具合は?不純物の混ざり具合は?色合いは?といったチェックを行います。最終的な確認は、実際に手に持ってみることでしょう。持ったときの重量感とか感触を確かめるのです。偽物の玉材は、光沢がなく、透明度が低く、叩いても鈍い音しかしない重量感のない石だからです。
第二のデザインの評価は、美しさや力強さ、安定感や存在感といったことになるでしょう。しかし、デザインは個人の好みによるところが大きく影響します。私は独自性を重視しています。これは、職人さんの知恵と工夫の跡が作品から感じられるからです。明や清の時代には戦国や漢の時代を偲んで、当時のデザインを模倣した作品が盛んに作られました。これらは好みではありません。ただ、これらの作品には「?古」と明確に書かれてあるので贋作ではありません。本物の贋作は、違った時代のデザインや紋様が入り混じった知性のない訳の分からない作品が多く、見分けるのは容易です。
第三の彫りの評価は、緻密さや丁寧さにあるでしょう。眺めるだけでなく、実際に手に持ってみることです。丁寧に仕上げられた作品は肌触りが良く、職人さんの魂まで伝わってきます。贋作は、肌触りが悪く、幼稚で、感じてくるものなど何もありません。
その他、時代により使われた道具が違います。道具から製作年代の判定ができます。例え、古い玉材を使い、古いデザインで作っても、電動機械で作られた贋作は、手作業で丁寧に仕上げられた作品のような味わいが感じられません。
人物や動物作品などは、見るだけで良し悪しが分かります。それは、目が生きているかどうかです。いくら美しい姿や形をしていても、目が生きてなければ意味のない作品になってしまいます。優しい目からは優しさが、鋭い目からは迫力が感じられます。
最後は、古い玉器の見分け方についてです。古さを判定する方法には、色や形の変化があります。墳墓は時が経つと崩れて土に埋まり、副葬品は土に含まれた化学物質、金属物質、水などの影響を受けて変化を始めます。玉器は柔らかい部分から色が沁み込んだり溶けたりします。色の変化には褐色泌、灰白色泌、紅色泌、琥珀色泌、黒色泌などがあり、土が褐色に、鉄分が紅色に、銅分が緑色に、水銀が黒色に玉を染めます。その他、白っぽい縞模様の水泌紋、象の皮のような象皮紋、鶏の骨のように白くなる鶏骨白泌などがあります。どの様な変化にしても、3千年には3千年の、2千年には2千年の歴史の変化が作品に沁み込んでいるのです。自然が描く味わい深い泌色や変化は、作品の価値を大いに高めます。贋作は、これらの変化を人工的に真似ているので不自然さがあります。表面の変化は真似ができても、中まで沁み込んだ歴史の変化を真似ることはできません。
以上のチェックに合格した作品は真品(本物)です。後は、自分の好みで玉器を選べば良いのです。中国骨董品の96%は偽物だと言われます。それは書、絵、焼物、青銅器などで、玉器の偽物は少ないのです。作るだけの技術力はなく、材料である玉石が高騰して偽物を作るのも容易ではありません。それに、儲けにならないので誰も作ろうとはしないのです。
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