…7月の西安…

 

 工事に問題発生

 

 移転先事務所の配線工事が6月末で終了、7月になると間仕切りとパーテーション設置工事を始める。問題が発覚、床が傾いていた。窓側から通路側へ行くほど低くなり、高低差が3cmある。パーテションを立てると、床面との間に隙間が生じてくる。床工事をやり直してもらうのが一般的な対処方法だが、西安では反対にひどくなるこが考えられる。工務店も同じ考えで、こちらで解決することにした。

 

 次の問題が発覚。設計図面には記載されてあったが、管理室に窓が無い。今からではどうしようもなく、気付くのが遅かったと諦めるしかないだろう。だが、窓は欲しい。そこで、近くにある窓を管理室側に取り込むことにして、工務店に工事の変更を依頼した。

 

 ビルはまだ工事中で、砂埃が舞い、塗料の臭いも強い。2時間居ると喉が痛くなってくる。予定している7月29日の引っ越しは大丈夫だろうか?不安になり不動産部に問い合わせるが、「大丈夫。」との返事。信じるしかないだろう。

 

 工事は進む

 

 

 今年の夏は異常気象で、気温40℃を超える猛暑日が続き、地表の温度は既に70℃を超えたと聞く。高温で有名な新疆トルファンよりも高い。厳しい暑さだが、工事は予定通りに進む。

 

 10年前の工事と比較すると、今回の工事は手間が10の1程度。前回工事では、数軒の建材店を訪ねて部材を探し、品物が決まると店の人と現場に行って数量を計算。発注時に1割程度の予約金を支払い、納品前までに残りの全額を支払う。納入日には現場で数量や破損をチェックして部材を工事人に渡すといった作業があった。部材の調達だけでも大変な苦労だ。

 

 今回は、工務店が持って来るパソコンや携帯電話の画面から品物を選び、工事図面から数量を計算、作業は座ったままで終わる。進捗状況は携帯電話へ送られてくるの画像から確認することができる。文明の進歩だ。

 

 7月中旬、使用中の間仕切り設備を新事務所に移設した。これが終わると、絨毯工事、看板の取り付け、購入備品の搬入など仕上げ作業に入る。7月27日、工務店から工事終了の連絡が入った。移転日を再確認するため不動産部を訪ねた。ビル内から異臭は消え、エレベーターも半数が稼働していた。室内は、空調機のテスト中で快適温度に冷やされていた。移転は予定通りだ。

 

 

 



 


 突然の移転延期

 3週間続いた猛暑が、移転日の3日前から降り出した雨で、気温は36℃にまで下がった。やれやれと喜んでいたが、前日になってとんでもない知らせが飛び込んできた。不動産部からで、空調機のテストが終わないので移転日を延期してほしいというのだ。今になってそれはないだろう。

 

 気持ちが落ち着いたところで、不動産部に「いつテストは終わるの? 2,3日先、それとも2,3ヶ月先?」と、怒りの質問を投げてみた。返事がない。西安人は、都合が悪いことには口を閉ざしてしまう傾向がある。こちらで移転日を1ヶ月先の8月26日に決め通知した。話し合いの必要などない。

 

 移転延期の後始末だ。手配してあった運搬屋、電話局、工務店、現事務所の不動産部に延期の連絡をする。西安では約束が約束にならないことは承知しているが、今回の件はひど過ぎる。

 

 現事務所で作業を再開したが、こちらでも問題が発生。電話回線が切られていた。電話局には移転延期の申請書を提出して了解まで貰ってあったのに、どうして? また、引っ越し屋は7月29日の朝、事務所前に勢揃いしたそうだ。あれだけ確認をしてあったのに?彼らの仕事ぶりからは真剣さが感じられない。

 

 予想しないことが次々に発生、西安スタッフは呆れ顔。私は頭を冷やしに一時帰国した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 …8月の西安…

 

 事務所移転

 

 移転日の3日前に西安へ戻った。振り返れば、事務所移転は今回で四回目になる。いつもトラブルがないようにと神様にお願いしてきたが、これまで聞き届けられたことはない。それでも、無事に終わりますようにとお願いした。

 

 8月26日(土曜日)いよいよ引っ越しだ。何となく朝から怪しい雰囲気が感じられる。予感的中、引っ越しトラックの出発時刻が予定の8時から9時に変更された。聞くと、西安市ではトラック運行は9時からに決められているそうだ。プロの運送屋が8時に決めたのだろう。

 

 備品の運び出しが終わり、後かたずけの数人を残して新事務所へ移動した。事務所に入ると冬のような寒さだ。半袖シャツに半ズボンの引っ越しスタイルでは、とてもこの寒さに耐えられない。初めて気付いたのだが、部屋に空調ON,OFFのスイッチがない。そんな馬鹿なと不動産部に連絡すると、「最新の空調機で、ビル側が責任をもって快適温度に管理するのでスイッチの必要がない。」、それに「今は最高レベルまで冷やすテスト中で、暫く待つように。」とのこと。なんで今日やるの?ほんとうに最新設備なの? 

 

 耐えていると、今度は天井の照明まで消えた。不動産部に連絡すると、建築作業員が間違ってスイッチを切ったとのこと。直ぐに復旧したが、何が起きるか予測できないのが西安。だが、この程度のゴタゴタで挫けていては西安では生きていけない。寛容な心を持つことが大切だ。


 

 

 

 

 

 

 

 業務がスタート

 

 

8月28日、新事務所で業務がスタートした。西安では引っ越しに一週間かけるのが普通だそうだが、我社は1日で終わらすのが常識になっている。ただ、引っ越し開始時刻の遅れから、午前中に電話回線の接続とドアロックのセット作業が残った。午後からは通常業務に入った。そこへ、不動産部から入居祝いのシャンペンとケーキが届けられ、社員一同笑顔で記念写真を撮る。

 

 今回の事務所移転では多くのトラブルが発生した。しかし、終わってしまえばそれらは記憶から消え、完成した喜びだけが残る。個性的な看板、広くなった会議室、スッキリした配線に満足している。費用をギリギリまで抑えた設備にしては、立派な出来上がりではなかろうか。




 

 

 

 

 

 …9月の西安…

 

 新入社員研修を始める

 

 新しい環境の中、9月1日から新入社員研修を始める。広くなった会議室の使い勝手と雰囲気を確かめる。快適、自然と気分も乗ってくる。

 

 今年の新入社員研修の改善目標は日数の削減だ。昨年は10日間を8日に、今年は6日までに短縮する。カリキュラムの数は減さないで、個々の内容を簡略化する方法で対応した。最終日の個人面談で習得度をチェックしたが、これまでとほとんど変わらない。これを分析すると、これまでは彼らにとって難しい話が多かったように思えてくる。




 

 

 

 

 

 



 募集活動がスタート 

 

 新入社員研修が終わると、直ぐに秋の募集活動が始まる。9月12日、西安電子科技大学で第一回企業説明会を開く。昨年同様、前日に大学を訪問して説明会参加を呼び掛けるチラシを配った。

 

 開始時刻の1時間前から学生が集まり始めた。上々のスタートだ。訊ねると、他校から来た学生が多い。西安電子科技大学の学生たちは開始直前になって入って来た。この日の参加者は140名。前年度と比較すると60名増だ。

 

 今年の改善は、昨年のアンケートで意見が多かった「時間を短くした方が良い。」を参考に時間短縮を検討した。日本語劇をカットすることになったが、これは日本語を知らない学生が聞いてもチンプンカンプンと感想文に書かれてあったからだ。その他、雰囲気を変えてみようと、司会役を女性から男性にチェンジした。

 

 司会者が緊張するなか説明会が始まる。彼の緊張を感じてか、私まで固くなった。私のスピーチは2回、1回目はまずまずだったが、それで気が緩んだのか2回目はボロボロ状態。大いに反省している。

 

 この日のアンケートを読むと、董事長(社長)自らが参加してくれたことに感動したという感想が多かった。もっと反省しなければならない。


 

 

 

 

 

 

 

 

 …10月の西安…

 会社説明会

 

 10月10日、西北工業大学で第二回企業説明会を開く。雨にもかかわらず前回よりも多い学生が集まり、私のスピーチもうまくいった。だが、筆記試験結果が最悪で、合格者は1名だけ。国慶節休暇が明け直ぐの開催時期に問題がありそうだ。

 

 10月23日、第三回企業説明会は西安交通大学で行った。本社から海外事業部長を招いての開催で、この秋最後の説明会だ。入場が始まり、本部長は笑顔でニーハオと学生に声をかけ、新入社員たちも慣れてきたのか良い動きだ。参加者は160名、記録更新だ。開始時間に入口を締めたが、遅れて来た学生が40名程いたそうだ。勿論、彼らは入場負荷。遅刻してくるような人間はいらない。筆記試験結果は上々で、合格者は15名になった。その中から7名を選び、面接試験を行なった。

 

 この秋の採用では、二次面接で不合格にしたり、健康問題で不合格にしたり、家族からの反対で本人が辞退してきたりといったケースが特に多かった。結果、第一回、第二回での採用内定者はゼロ、第三回の2名だけになった。来春もう一度募集活動を行うことにする。




 

 

 

 

 

 

 


 …11月の西安…

 黄葉を撮る

 

 忙しさも一段落、気分転換にと話題になっている「銀杏の樹」を見に出かけた。場所は秦嶺山脈の麓にある「古観音禅寺」だ。1400年前、歴史上で有名な皇帝様が植えた銀杏だそうだ。

 

 参道は大勢の人で賑わっていた。進んでいくと、色ずいた銀杏の葉が屋根の間から見えてきた。入口付近までいくと長蛇の列、いつになったら入れることやら。暫く待っているとボランティアの若い女性から声が掛かり、こちらへと手招きしている。外国人だからであろう、別の入口から中まで案内された。御礼をと振り返ると、そこに彼女の姿はなかった。観音様だったか?

 

 黄葉撮影というには数日早かった。三脚を立てて撮影を楽しむといった状況ではなく、人ごみを掻き分けながらになった。秦嶺山脈の麓には多くの寺が点在している。見物客が少ない時期に、のんびりとそれらを撮影巡りをしてみたいものだ。



 

 

 

 

 

 

 

 

 結婚披露宴に出席

 


 11月4日、社員の結婚披露宴に招かれた。新郎が我社の社員で、新婦は西安にある日系同業他社に勤める女性だ。早めに出発したが、途中交通渋滞に巻き込まれ到着が開宴時刻ギリギリになってしまった。既に出席者は席についていて、恥ずかしい思いをした。

 

 会場を見渡すと、我社の社員は全員スーツ姿、相手方は西安の通常スタイルである普段着姿だった。披露宴が始まる。新郎が挨拶、新郎の良い所だけを強調した私の祝辞と続き、次に新婦側主賓の祝辞だ。普段着で出席したことを恥ずかしく思うという内容の話があった。日系企業に勤める者にとってはそうだろう。気にしない精神は西安の素晴らしいところだが、場所を考えるべきだった。

 

 新郎の気配りで、料理は私の口に合うものばかりが並んだ。つまり、辛い料理がないということだ。満腹になるまで美味しくいただき、白酒(度数:53℃)を4杯も飲んだ。気分は上々である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …12月の西安…

 3名が本社へ

 

 昨年9月に入社した社員5名のうちの3名が、本社転属で岡山へやって来る。岡山空港へ出迎えに行ったが、気持ちは教え子たちに会うのを楽しみにしている老先生といったところだ。  ニコニコ顔で到着口から現われた。白いシャツにスーツが似合っている。入国審査、税関検査、いずれでも質問されることなく通過したとのこと。これは、西安で行った社会人教育の成果だ。

 

 翌日は、ビジネス用品の買い出しに付き合った。スーツ、シャツ、ネクタイ、コート、バッグ、昼食休憩を挟んで午後はシューズ。西安ではビジネス用品が乏しく、彼らは目を輝かせながら品選びをしていた。西安で骨董品選びをしている私の様子はこれと同じかもしれない。買物は続くが、後のことは海外事業部長に任せて帰宅た。お昼寝の時間だ。

 

   西安で年越し

   西安の年末年始の休暇は元旦の1日だけ。これまでは、10月から土曜日出勤を始めて、その振替えを年末年始の休暇にプラスして代休を取ってきた。だが、今年はそれができない。受注作業の納期が早まり、12月からは残業体制だ。

 

 社員激励のため、12月23日に西安へ移動した。西安で年越しするで、日本の正月品を少しだけ持って行くことにした。だが、あれもこれもになり、大型スーツケース3個にまで膨れてしまった。

 

 到着の翌日は日曜日でクリスマスイブ。祝うわけではないが、賑やかさに誘われて街へ出かけた。青島ビールでメリー・クリスマス。

 

 

 

 2017年の終わりに思うこと

 

   2017年の年頭に考えたのは、「今年一年を休まず走り続ける。」だった。振り返ってみると、新入社員たちに日本文化の詰め込み教育を行って月,4月,6月に彼らを日本へ送り出した。6月からは猛暑のなか新事務所の設備工事を始め、8月には事務所移転という大仕事をやった。今年一年を休まず走り続けたと思う。

 

 そのご褒美であろう、体重が5kgも減って健康状態がすこぶる良い。医師から、「元気老人が来たね。」と声を掛けられる。私は思う、老人が健康を願うなら仕事に精を出すことだ。

 

 先日広島へ出張した際、一歳年上の社長と10年振りに会うことができた。その方には、2003年9月に大連ソフトウエアパークへ連れていってもらった。その時の大連訪問が西安子会社開設のきっかけになったのだから大恩人だ。その方が、「あと10年仕事を続けるよ。」と明るく語った。計算すると83歳にもなる。自信はないが、その言葉でやれるとこまでやってみるかという気持ちが湧いてきた。元気な人からは元気がもらえるものだ。私も、人に元気を与えられる人間になりたいと思う。