…7月の西安…


 上海の乗継便が

 

 3月末の航空ダイヤ改正で、上海から西安への乗継便の多くが、新・虹橋空港発に変更された。岡山便が到着する浦東空港から虹橋空港へは、リムジンバスで1時間の移動、再度の搭乗手続も必要になる。だが、浦東空港での乗り継ぎは、待ち時間が6時間にもなる。困ったものだ。

 4月、5月の出張は、待ち時間が嫌で虹橋空港へ移動した。しかし、7月は荷物が多く、浦東空港で乗り継ぐことにした。問題は待ち時間をどう過ごすかだが、上海は知らない街ではない。リニアモーターカーと地下鉄で40分もあれば中心街まで行ける。

 上海で好きなエリアは南京西路、国際色が豊かで外資系企業の事務所が多く集まっている。昼食は、ミシュランのベスト2にランクされている外国人ご用達レストラン・テインタイホーだ。久しぶりの蟹味噌小籠包と海鮮麺は美味しかった。食後は、近くにある外国人専用スーパーマーケットでパンの購入だ。ヨーロッパにも負けない味と食感なのだ。ダイヤ改正を恨んだのは間違いだったようだ。

 

 

 

 

 

 

 



 


 会社案内を印刷

 7年前に印刷した会社案内を、昨年秋の募集で全部使った。時代も変わり、デザインを一新する必要がある。西安にはデザイナーが少なく、日本で準備していくしかないだろう。

 西安スタッフと別々にデザインを考えてみることにした。私は一目見て日本企業を感じさせるものにしたいと考え、桜、紅葉、菊、あじさい、生け花を取り込んだ。上品な色合いにしたいが、中国は華やかさを求める国、悩むところだ。出来上がってみると、全体的に淡い中間色になってしまった。

 西安スタッフの案が届けられた。私とは真反対のモダンなデザインだ。これでは、両方の案をミックスすることはできない。そこで、これまでデザインをお願いしてきた先生に、この難しい問題の解決をお任せした。

 先生からデザイン画が届けられた。表紙は、赤・黒・金を使った華やかなもので、京舞子の帯を思わせる色彩だ。開くと、私のデザインは無く西安スタッフのものばかり。心はボロボロ、二度とデザインなどするものか。

 先生の原稿を携えて西安へ移動。文字部分を社内作成し、印刷屋を訪ねて組み込み作業を行なう。スッキリした仕上がりだ。数日後、印刷屋を再訪問して色調整の確認を行う。単純な作業だが、夜10時から始めると言う。理由は、西安市がPM2.5対策で、印刷作業は夜間のみと規制したからだ。紙粉が舞う印刷機の傍で、睡魔と闘いながら機械から出てくるのを待つ。三回目の色調整で決まり、印刷物に署名して作業が終了した。時刻は午前0時を過ぎていた。

 西安では、仕事量が日本の何倍にも膨れ上がる。日本にいる人たちに、この苦労を理解してもらえるだろうか。明日は帰国日だというのに。
 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 帰国便がフライト・キャンセル

 

 帰国日、西安空港へ移動。日本へ来ている台風12号の、怪しげな動きが昨夜から気になっている。チェックイン・カウンターへ行くと、スタッフから予定便の搭乗手続がクローズされているので、暫く待ってほしいと言われた。悪い予感。

 台風情報を確認すると、北上していた台風12号は突然Uターンして岡山を直撃しそうだ。20分後、スタッフから正式にフライト・キャンセルが言い渡された。

 西安オフィスへUターン、気分直しに夕食後大唐不夜城を歩いてみた。この夏一番人気の観光スポットになっている。照明装飾され、露天が並び、西安音楽大学の学生たちが23時まで中国古楽器を演奏している。歩行者天国に入ると大変な賑わいで、日本や欧州の団体観光客とすれ違った。フライト・キャンセルも悪いことばかりではなかった。




 

 

 

 

 

 

 …8月の西安…

 

 西安の興味は

 

 これまで西安に来られたお客様が、興味を持たれたベスト4を紹介します。予想外の結果で、有名な兵馬俑や城壁ではなく、古い西安を感じさせてくれる身近なものばかりだ。

 No.1は、頭上で束になっている電線や電話線だ。表通りは地下への埋設工事が終わったが、裏通りは写真のような状況。日本でも昔よく見かけた風景だが、違いは雨が降ると火花が散ることだ。

 No.2は三輪車。特に、リサイクル品を高く積み上げて走る三輪車に興味を持たれる。4、5mの高さまで荷物を積み上げて走るので、曲がり角で転倒するシーンに出くわすこともがる。今でも新車が製造されていて、農作物の運搬用として大活躍だ。

 No.3は3人〜4人が乗って走るスクータだ。二輪好きの私にとってはとても考えられないことで、定員オーバーは勿論のこと、ヘルメットの着用なし、反対車線を逆走、信号無視、夜間の無灯走行といった状況で走っています。おまけに、スクータのタクシーまでいるのです。

 No.4は三輪車を改造した移動式屋台。中心街は規制されて見かけなくなりましたが、少し離れたエリアで営業を続けています。これらの屋台は、突然消えたり現われたりします。理由は、無許可の店が多く、取り締まりから逃れるためです。情報は迅速かつ正確に伝わっているようで、一斉に移動していきます。夜間は暗闇の中での営業で、目で料理を楽しむといった環境ではありません。しかし、若いカップルなどは暗がりを楽しんでいるようにも見えます。

 日本人にとっては、どれも懐かしく感じられる風景でしょう。しかし、この話を西安の人が聞くと、馬鹿にするなと怒ることでしょう。西安人は、古いものは価値がないものと考えているようです。





 

 

 

 



 日本で夏の行事 

 

 本社にいるオジサン3人が、夏季休暇中に来日している西安社員を楽しませてあげようと、日本海海水浴と蒜山高原1泊の小旅行を企画した。西安社員に話すと全員ニッコリ。

 アウトドアが専門のオジサンが案内役となり、車2台で鳥取へ向け出発。途中で昼食弁当と飲み物を調達して海水浴場へ。昼食をとり、日焼け止め対策と準備運動を十分に行ってから海へ。泳ぐことが初めての西安社員たち、2時間過ぎても海から出てこない。

 15時過ぎに無理矢理海水浴場を離れて倉吉へ移動。食料の調達だ。夕食のメイン料理は豚肉の冷しゃぶ。それと、たっぷりのビール。日本と中国の話が入り混じり、楽しい会話が続いた。10時を過ぎた頃、オジサン2人は昼間の疲れから早々とリタイヤ。

 翌朝は、高原での爽やかな目覚め、空気も美味しい。朝食を済ませ、白樺の森とジャージー牛牧場を観光、昼食は皆で釣ったヤマメの塩焼だ。楽しんでくれたかな?




 

 

 

 

 

 


 新卒の入社日を早める 

 

 新卒の募集時期が年々早まっていて、昨年などは新入社員研修を一時中断して活動を始めた。そこで、今年は入社日を9月1日から8月21日に繰り上げ、8月中に入社研修を終わらせることにした。

 西安への移動日が近くなり、日本では毎日のように台風が発生している。18号が通り過ぎたばかりなのに、もう19,20号が発生。進路予測では、移動日と19号がぶつかる。

 祈りが通じたのか、19号の進行スピードが遅くなり、台風の前を横切って上海へ移動できた。研修も予定通りに始められ、最終日には新入社員歓迎夕食会を開催。それにしても、今年は台風が多い年だ。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 …9月の西安…

 募集活動を開始

 

 大学内での企業説明会開催準備に掛かる。9月に2回予定しているが、12日と26日に会場の手配ができた。開催日の2日前から、社員が大学を訪問して開催案内のチラシを配り、ポスターを貼って回った。ポスターに書かれた「BSE」の文字に関心を持ってもらえると嬉しいのだが。

 12日は早起きし、150名分の筆記試験を持って西安電子科技大学を訪問。開始1時間前から学生が集まり始めたが、例年になく人数が少ない。この1週間の様子を学校側に訊ねると、中国ではトップクラスの企業でも20名程度だったそうだ。今年は学生の動きが遅いようだ。

 この日の参加者は21名。人数は少ないが、これまで通り全力で説明会を進める。参加者が書いた感想文には、参加できて気持ちが良かったとか、人生の進路が見えてきたなどと書かれてあった。
 他社の説明会を覗いてみると、会場への出入りは自由、携帯電話使用も可、隣にいる友人との会話も可といった様子だった。我社の説明会は、定刻には入口を締め、参加者の周りを社員で囲み、あくびすることも遠慮するくらいの雰囲気にしている。我社の説明会を中国化させる考えはない。

 一度帰国して、一週間後に西安へ移動。26日に第二回企業説明会を西北工業大學で開く。参加者は66名に増え、遅刻して入れなかった学生が30名以上いたそうだから、まずまずといったところ。
 9月に2回行った筆記試験合格者は7名。だが、面接試験を辞退してきた学生が3名いた。理由は、家族の反対によるものだ。今年の日本は地震や台風による自然災害が多く、そのニュースが中国で度々報道されている。家族は日本を危険な国と判断したようだ。

 その他、学生から得た情報によると、教授たちは就職よりも大学院への進学を積極的に薦めているそうだ。公務員や大手企業も、採用を大学院卒に絞るところが増えてきた。Aクラスの大学では大学院への進学希望者が急増したそうで、ターゲットをBクラス上位の大学に切り替えた方が賢明かもしれない。




 

 

 

 

 

 

 …10月の西安…


 募集活動を続ける

 


 10月は9日と25日の2回の企業説明会を予定している。9日は西安郵電大学での開催。この大学で開くのは初めてで、ソフト開発を学ぶ学生数が多いことで決めた。気になっていのは開始時刻が16:30からで、筆記試験が終了するのは20:30になる。この時間帯しか空いてなかった。

 参加者が80名を超えて一安心。しかし、説明会終了と同時に半数以上の学生が退席していった。つまり、筆記試験を辞退したのだ。明確な理由は分からないが、西安流に考えると夕食時間を邪魔されたくなかったのだろう。受験者は減ったが、合格者が多かったのが救いだ。

 1週間帰国して再び西安へ。この秋最後の説明会を25日に西安交通大学で開く。最近の状況を学校側に訊ねると、学生数が激減してきたそうだ。この日も開始時刻が4時からなので心配だ。

 参加者は35名、昨年の160名とは大違いだ。毎年学生の動きが変わるところが、西安の募集の難しさだろう。この日、他校の学生が多いなかで、1名だけ西安交通大学の学生がいた。ただ、恋人らしき人物と一緒に参加しているので、どちらかが本当の応募者か判らない。筆記試験の結果は、No.1とNo.2の成績だった。この二人に面接試験の呼び出しをすると、男子学生が彼女のために当社を選び、試験に付き合ったのだと言う。二人は同郷出身で、彼は大学院へ進学、卒業後に結婚して西安で一緒に生活したいと考えている。面接試験まで二人でやって来た。中国の男は大変だ。

 秋の募集結果は採用内定者6名。内訳は、大卒男子3名、大卒女子3名。2年連続して女子の採用が出来なかったので、まずまずの結果だ。


 

 

 

 …11月の西安…

 本社実習の難しさ

 

 この1年に西安から本社へ赴任した社員は、昨年12月の3名と今年5月の2名の計5名だ。そのうち2名が秋に退職、1名が退職したいと言っている。理由の多くは、恋人や家族に会えない寂しさだと言う。赴任時の熱い志は消えていた。

 来日して3ヶ月が過ぎると、日本の生活に慣れ、全てに満足してしまう。学習意欲を無くし、休日には中国にいる恋人や家族と中国の話ばかりするようになる。相手は日本を知らないから、当然中国の話題ばかり。徐々にホームシックが重病化して、中国へ帰りたいと考えるようになる。

いつも思うのだが、中国の若者は目の前のことばかり見て、将来のことを真剣に考えない。将来のことを考えれば、BSEは夢が持てる職業だ。だが、2、3年先のことも考えられないというのが一般的で、10年を要するBSEへの道は余りにも遠い。

 これまでの調査では、要因の一つは休日の過ごし方にあると思える。日本語学習のために残業がないよう配慮しているが、これが悪い方に影響している。土曜日出勤がある職場では退職者がなく、土曜日出勤のない職場で退職者が出ているからだ。

 3年の日本実習を終えて、現在4名の社員が西安で頑張ってくれている。彼らに続く社員を育てていかなければならない。どうすれば良いかをいつも考えている。来月には新たに2名が本社へ赴任する。

 自分の進むべき道を認識している社員は問題ないが、満足して目標を見失い自己研鑽の大切さを忘れた社員には、是非とも対策が必要だ。急ぐ問題で、12月下旬に西安で本社と合同で対策会議を開く予定だ。


 

…12月の西安…

西安人は高級車が大好き

 

  国際都市・上海を走る車は大衆車が多く、西安は有名ブランドの大型車が多い。人気が高いのはドイツ製高級車で、ベンツ、BMW,アウディ、ポルシェと続く。その他、超高級車ロールスロイスやベントレーなども走り、フェラーリやマセラッテイといったスーパーカーまで見る。

 とにかく、大きくて豪華で高価な車ほど西安人には好まれる。この背景には、高級車に乗っている人は「信用できる人」という見方があるからだ。高級車で会社訪問しないと取引してもらえないとまで聞く。高級車は、事業継続のための必需品になっている。

 経済性重視の日本とは大違いで、西安で燃費の話など聞いたことがない。最近、アメリカ・テスラー社製EV車が増えてきたが、これは公害問題への関心があるわけではなく、高価な車ということが購入の理由だ。値段を訊ねると1450万円からと言われ、言葉も出なかった。見栄っ張りなのが西安人だ。

 車種とすればSUV車が圧倒的に多く、全メーカーが品揃えをしている。以前はトヨタ・ランドクルーザーやホンダ・CR−Vが多かったが、最近ではローバー、ポルシェ、ベンツ、BMW,キャデラックなどのSUV車が数を増やしている。中国メーカーも頑張っているが、まだまだといったところ。

 これら高級車に交じって、単気筒エンジンのサウンドを響かせながら三輪トラックがのんびり走っているのが西安の面白いところだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

海外事業部長が西安へ

 

 海外事業部長は、この数年間西安への出張を続けてきた。しかし、今年は販売を始めた「新・給食システム」の営業で忙しくて、西安どころではなかった。営業が一段落する12月下旬に、西安で予定している採用内定者懇談会、帰国社員研修報告会、対策会議、忘年会に参加してもらうことにした。早くからスーツケースを拡げ、休日には買物に走り回っているようだ。

 西安出張を怖がる社員が多い本社の中で、何故部長だけが西安へ行きたがるかを考えてみた。それは、西安の食事にありそうだ。彼から聞く話の中に、北京ダック、雲南ハム、シシカバブー、ジャージャー麺、アルコール度数3℃の青島純生ビールがよく出てくるからだ。理由は何であれ、西安が好きなことは良いことだ。

 22日に岡山を出発、今回は帰国休暇の社員も一緒なので3人旅だ。中国語の心配がなく、ゆったり気分で移動できる。西安へは定刻に到着、部長の興奮度はピークに達していた。これを鎮めるには、冷えた青島純生ビールしかないだろう。

 部長滞在中のスケジュールはハードだったが、大好物の北京ダックを楽しむ機会が多く、常ににこやかな様子で仕事を進めていた。また、西安社員も、久々の部長の来訪で元気が出た様子だ。本社からの来訪者がもっと増えるといいね。


 

 

 

 

 

 

 

   

 

 2018年の終わりに思うこと 

 

 年頭での目標は「怯まず挑み続ける」だった。大晦日の夜、大唐不夜城を散策しながらこの1年を振り返ってみた。怯まずを意識してか、悩むことなく挑戦を続けることができたように思う。苦しいこともあったが、決して落ち込むことがなかった。毎年目標を変えてきたが、暫くの間この目標を続けていくことにする。