西安の茶人
西安には茶を楽しむ知人が多く、茶の話が始まると何時終わるか分からない人たちばかり。休日には、朝から夕方まで茶館や茶葉店で過ごすと言うから凄い。彼らから聞いた話によると、中国茶の銘柄は多く、現在でも400種類以上あるそうだ。大分類すると、緑茶、青茶(烏龍茶)、白茶、紅茶、黄茶、黒茶、花茶に分かれる。茶人たちは、春は香りと澄んだ色が楽しめる緑茶の新茶、夏は体温を下げてくれる緑茶、秋は烏龍茶、冬は体を温めてくれる黒茶を飲んでいると言う。
中国茶を飲み始めたきっかけは、茉莉花茶(ジャスミン茶)が昼食後の眠気を覚ましてくれると聞いたからだ。日本の研究所の調査によると、ジャスミンの香りには脳神経を刺激する効果があり、午後の作業効率が10%向上したと言う。試してみると研究所が言う通りで、眠気覚ましに大きな効果があった。ジャスミン茶は花茶の分類に属し、茶葉が持つ臭いを吸収する特性を生かしたお茶だ。中国人が凄いと思うのは、香りを飲んでしまうという発想だ。
土産に届けたジャスミン茶にハマった日本の友人がいる。ジャスミン茶を冷蔵庫で冷やし、好きな焼酎をこれで割って飲んでいる。色々と試したが、ジャスミン茶に勝るものは無かったそうだ。焼酎が主役かもしれないが、中国茶を楽しんでいることは確かだ。
日本でポピュラーな中国茶と言えば、ペットボトルに入った烏龍茶だろう。だが、中国で一番飲まれとているお茶は緑茶で、生産量の70%を占める。特に、新芽の二芽だけを手で摘んだ茶葉が人気で、香りが良く、爽やかな味が魅力だ。 人気銘柄は「西湖龍井茶」で、日本の茶人たちからも愛されている。その他、見て楽しむ緑茶がある。グラスに茶葉を入れて湯を注ぐと、茶葉は一旦浮かび上がるがその後ゆっくりと沈んでいく。底で葉が縦に整列して、針が何本も立ったような様子になる「銀針」の名付けられた茶葉。その他、大きな葉がゆらりゆらり沈んでいく様子を楽しむ「太平候魁」という緑茶がある。中国の茶人たちは風流を知っている人達だ。
日本で知られている烏龍茶の銘柄は「鉄観音」だろう。商品名が同じならどれを飲んでも美味しいというわけではない。品質によりランク分けされていて、味と値段がイコールになっている。茶人たちから、茶葉は専門店で試飲してから購入するようにと注意された。土産物店で袋詰めされた茶葉は、中に何が入っているか分からないからだ。 特に緑茶を買うときは、保冷庫に保管されている緑茶を買うようにとも言われている。緑茶は暑さに弱いのだ。西安の茶人に好まれている烏龍茶は、特別に「岩茶」と呼ばれる種類のお茶で、岩の間に根を張り、岩からしみ出てくるミネラル分を吸収して育った樹から摘み取った茶葉だ。岩茶は福建省の武夷山が産地で、香・味ともに素晴らしく、その中で「大紅袍」が私のお気に入りだ。
黒茶の代表は普?茶(プーアール茶)で、中国南部の雲南省が産地になる。昔々、チベットへ一度に沢山の茶葉を運ぶため、茶葉を蒸気で圧縮して小さくした。ロバの背で運ばれていく間で白カビが発生して、茶葉の味がまろやかになったと聞く。プーアール茶には、10年物、20年物、30年物と表示されて売られているものがあり、古くなるほど高価になり、味もまろやかになる。 また、普?茶には熟茶と生茶があり、日本に入ってくる茶葉のほとんどは熟茶で、生茶は日本人に馴染みやすい緑茶に近い味で、美味しいが胃を痛めるそうでたまにしか飲んでいない。熟茶には痩せる効果があると聞き、毎年寒い時期になると飲んでいるが、何年飲み続けても体形に変化が見えてこない。痩せるって本当だろうか。
中国の紅茶(べにちゃ)と英国の紅茶(こうちゃ)の違いについて茶人に訊ねると、「全く違うお茶だ。」と言う。どんな違いがあるのか訊ねると、どの茶人からも明確な答えが返ってこない。飲み比べてみると、若干の甘さの違いだけだ。紅茶(べにちゃ)は西安で人気が急上昇しているお茶だ。
先日西安の高級スーパーを歩いていると、伊藤園の中国工場で製造された白茶ベースのジャスミン茶が置いてあった。香りが良く、白茶の上品さを生かした味に驚ろいた。白茶は、色が無く、味がなく、飲んで暫くしてから甘味が感じられる不思議なお茶だ。伊藤園さんの発想には脱帽だ。サントリーも頑張っていて、高級岩茶「大紅袍」をペットボトルで売り出した。
その他黄茶があるが、生産量は極めて少なく、高価だと聞いているのでまだ飲んだことがない。
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