2026年のはじめに

     

     2025年上半期の西安開設記は休刊させていただきました。その理由は、1月から7月まで癌治療を受けていたからです。治療が始まって3週目には頭髪が全部抜けるという大事件が起きて、人生の終わりを感じてしまいました。


     治療は6回に分割されていて、回ごとに体力回復のために1週間の治療休暇が組み込まれる厳しいものでした。味覚が鈍くなり、胃と腸の調子が悪くて食欲が無くなり、指先や足先まで痺れてきたのです。


     治療は入退院の繰り返しと思っていましたが、3回目から通院するようにと言われました。この背景には、重病患者が多くてベッドに空きが無くなったことがあるように思われます。軽い病状を喜ぶべきでしょうが、自宅治療となると不安になってきます。


     抗がん剤を服用しては寝てばかりの治療が6月下旬まで続きました。食事と入浴時間を除いては、殆ど寝ていました。少し動くとハアハア、直ぐ横になるといった具合でした。6月下旬に抗がん剤治療が終わり、7月中旬の最終検査で「治療終了」との診断結果が出されました。ヤレヤレですが、体の中に貯まった抗がん剤を体外に排出する治療が残っていて、再発防止のための検診も続きます。


     

     

     

     

     

        …7月の西安…


     
     転属社員が岡山へ

     

     7月4日、フラフラする身体に神経を通わせて、岡山空港へ転属社員を迎えに行った。到着口から出てくる瞬間の表情を見るのを楽しみにしていて、緊張した顔、ほっとした顔、嬉しくてたまらない顔など、様々な顔が見えてきます。到着から30分、嬉しくてたまらない顔で現れた。これで安心。


     海外事業部長の運転で宿舎へ直行、荷物を置いて直ぐに「はるやま」へ移動する。初来日の社員にとって恒例になったビジネス用品と衣類の買い出しだ。驚くことに、ビジネス用衣類の値段は日本方がはるかに安価だ。これには、「はるやまVIP」である海外事業部長の値引き交渉が大いに貢献している。


     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


     
     
    西安の経済状況

     

     西安の経済状態は悪化するばかり。五星ホテルでは入口にテントが張られ、テーブルに料理を並べて販売を開始。客が来るのを待ってはおれないといったところだ。こんな状況下で役所から通達が出された。「3名以上の会食を禁止する。」である。違反すると罰金まで徴収するという。


     こんな話もある。9月から「企業と従業員が社会保険料の支払いを回避することは違法である。」と、最高人民法院から突然の発表があった。地元の中小企業で社会保険制度に加入しているところは少ない。それらの企業が社会保険料を負担するとなると、倒産が大量発生してくる。周りからは「経済無策」の声が聞こえてくる。


     国が実施する経済対策としては、新幹線の延長工事がある。しかし、運用が始まった路線で赤字が発生しているというから、本当に経済対策になっているのか疑問である。それなら、昨年から多発している洪水対策のための護岸工事にお金を使う方が国民に喜ばれると思う。今年も洪水のニュースが毎日のように流れてくるのだが。


     


     …8月の西安…

     

     今年の給料改訂

     西安では高額所得者だった公務員や金融関係者が、給料の減額や賞与の支給停止扱いになっている。その他、多くの地元企業が社員の待遇を下げた。我社はどうかというと、減額や停止はないが、円安の影響でこの数年間は昇給率を低く抑えている。今期どうするか悩むところだ。


     今期予算の日本円為替レート予測は、前期比で3.8%円高に設定した。だが、春先から為替レートは乱高下を繰り返している。それに、トランプ関税の影響でどうなるのか見通しが立たない。予算通りにやっていけるか不安だ。


     日本国内では今年の昇給率は6%以上と騒いでいたが、中国は昇給など考えられない状況にある。どうするか、ギリギリまで考えてみる。

     



     

     

     

     生え始めた頭髪

     

     2月上旬に、抗がん剤治療の影響で体中の毛が抜け落ちた。毛のない頭が気になり、病院の売店へ専用の帽子を買いに行った。売店のおばさんが、「次に生えてくる髪は以前よりも立派な毛ですよ。」と優しく言葉をかけてくれた。慰めの言葉と分かっているが、信じたくなってくる。


     毛のない寂しい日々を過ごしたが、8月になると毛が生え始めた。頭を撫でると確かに毛の感触がある。その後、色が白から灰色に変わり、月末近くになると本数まで増えた。西安出張も近いことだし、1年振りに散髪屋へ行くことにした。店主は、少ない毛を丁寧にカットしてくれた。料金がいつもより高額になったが全く気にならなかった。ヨッシャ、西安へは帽子無しで出張する。

     

     

     




     

     

     


     …9月の西安…

     

     西安出張 
      
     

     落ちた体力が、どこまで回復したかを試す時だ。この日のために生活習慣を早寝早起きにして、食事をお肉からお野菜中心に切り替えた。それに、食欲がないことを活用して、医者が薦める理想の体重まで落とした。その結果、問題だった血圧、中性脂肪、コレステロールの数値が適正な数値内に納まったのである。これには、禁煙も大いに貢献していると思われる。


     良好な状態ではあるが、無理は禁物だ。出張期間を2週間に短縮、移動時の負担軽減のために航空券をエコノミーからビジネスクラスに変更してチェックイン時間を短縮、行きと帰りに上海1泊を組み込んでハードな移動スケジュールを改善した。その他、これまでスーツケース3個で移動していたが、2個に減らす対策も考えた。


     上海1泊を利用して、シーズン・インしたばかりの上海蟹を楽しむことにした。有名店「蟹王府」に予約、蟹味噌フカヒレスープと蟹味噌焼ビーフンを注文する。すると、長い間味を感じてなかった舌が、蟹味噌の濃厚な味に刺激されたのか美味しさを感じようになった。目論見は見事に成功したのである。


     西安到着後忙しい日々が続いたが、西安料理のお陰で食欲が改善して体調も回復してきた。濃い目の味付けが味覚を蘇らせてくれたからだろう。社員から、「病気を心配していたが、元気な様子を見て安心しました。」と声が掛かる。帰国前夜に体重を計ってみると、2kgも増えていた。


     


     

     

     

     

     


     
    新卒募集へ 

     

     ここ2年は経験者を中心に募集を進めてきた。直ぐに仕事が出来るからとの理由で採用したが、育った環境の違いから社員と馴染むことができずに退職していった者がいる。


     仕事への取組み方や進め方に対する考えの違いから、先輩社員たちは「10年の経験者よりも、入社1年目の社員の方が使いやすい。」と言っている。他社で育った経験者を、ハイの返事しかない我社の文化に染めるのは無理だったようだ。


     中国では、新卒の就職率が極端に悪化している。政府の発表では中国経済は発展を続けていると言うが、先端産業だけが対象でそのGDP割合は7.5%だが、雇用寄与率になると1%にも満たない。職場を増やす努力がもっともっと必要だ。


     9月中旬に大学ネットへ募集内容を登録、2025年度の新卒募集活動をスタートさせた。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


     

     

     

     


     

     …10月の西安…

     

     円安への緊急対応

      

     夏に日本円が円高に動き始めて、少し気持ちにゆとりが出てきた。しかし、秋を迎える頃になると急に円安方向に動きだして、気持ちのゆとりなど消えてしまった。これまで削れる経費は削ってきた。これ以上何を削れるというのだろう。


     円高に転じる様子は見えず、何とかしなければ困ったことになる。非常事態を宣言、日本取引先へのお歳暮購入と忘年会を中止、本社転属予定者の赴任時期を延期した。これでも円安対応には不十分で、残るのは最後の対策である賞与支給額の減額だ。来春には円高に転ずることを信じて、減額分は来春に支給することを約束して納得してもらう。


     円安誘導は日本政府最大の失敗だと思う。



     

     

     


     

     

     …11月の西安へ…

     

     最後の終活

     

     

     昨年11月、人生最後の終活にしようと中国古玉器への取り組みを始めた。だが、買取り業者の交渉相手からは断られるばかり。玉鑑定で何度も失敗したようだ。年末を迎える頃、テレビ「なんでも鑑定団」でコマーシャルを流している業者に連絡してみた。すると、「来年11月に岡山で鑑定大会を予定しているので、その時にお話ししませんか。」と誘われた。急ぐ話でもなく、一年待つことにした。


     10月上旬に業者のホームページを開いてみると、11月7日に岡山で開催される記事が掲載されていた。早速、開始時刻の10時に鑑定を申し込んだ。高額買取りが望ましいが、欲張り過ぎても良くない。双方が納得できる売却額を考えておかなければ。


     中国玉市場の動向は、新疆ウイグル自治区タクラマカン砂漠の東側に鉄道が通り、崑崙山の麓にある最上質玉石を産する和田(ホータン)に駅ができた。この夏NHKで報道されていたのは、リュックサックに現金を詰め込んで、多くの漢民族が玉原石を買いに和田へ押し寄せている様子だった。開通後、毎年原石価格は20%から30%高騰しているという。思い出せば、2003年のNHK放送で採取禁止により玉原石価格が100倍になったとの報道があった。玉器研究を始めたのはこの頃だった。


     鑑定日の2日前に作品12点を選んだ。どの品にも思い出があり、手放すことに抵抗がある。当日、中途半端な心理状態のまま鑑定会場に出向いた。対応してくれた玉器専門家の前にまず5点を並べ、最初の箱を開けた。何の反応もない。「時代はいつと鑑定されましたか?」と訊ねたが、返事がない。


     彼は無言のまま全部の箱を開けて拡大鏡とペンライトを持ってそれらしく振舞っていたが、その様子から彼の鑑定能力は無いと判断した。「ここまでにしましょう。」と彼に声を掛けた。有名な骨董屋でも玉器に関しての鑑定力はこのレベルだ。玉器鑑定は中国人でないと無理だと思える。次の終活作戦は、日本で開催される中国人バイヤーが集まるオークションへの出品だ。

     

       

     

     

     

     

     


     

     

     

     

     

     
     …12月の西安 …

     庭木の手入れ


     病気治療のため、今年は庭の手入れが全く出来ていない。伸び放題になった枝、咲き終わった花木の花殼もそのままだ。庭が可哀そうで、リハビリを兼ねて庭木の手入れを始めることにした。


     だが、少し動くとハアハアで休憩ばかり。それでも気にせず作業を続けていくが、少しずつ綺麗になっていく。山茶花も咲き始めて、嬉しい気持ちでいっぱいだ。


     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


     西安で新年を迎えるはずが

     

     12月中旬、旅行社から岡山・上海便がフライト・キャンセルになったとの連絡が入る。この便は来年3月末まで飛ばないそうだ。全ての手配が終わり、西安で新年を迎えるはずだったが。


     中国が駄目なら韓国だ。大韓航空で岡山からソウルへ移動、そこから西安へ行くルートを調べる。往復ともにソウル一泊が条件になるが、飛行時間、料金は上海経由と変わらない。初めての韓国で不安はあるが、そんなことを言ってはおられない。出張期間を2月に変更して手配にかかる。


     

     

     

     

     

     

     

     

     


     2025年の終わりに


     2025年一番の出来事は癌治療だ。1月から始まった抗がん剤治療は、ベッドから起き上がるのもしんどくて寝てばかりしていた。二番は禁煙だろう。治療中の胃の調子は最悪で、タバコを吸うことなど考えられず、無意識のうちに禁煙という偉業を達成した。


     「タバコを止めるなんて愚かなことは考えない。」と60年間言い続けていただけに、これは奇跡的な出来事と言えるだろう。その他の治療として10月に左眼の手術を、12月には右眼の手術を受けるなど、病院との関りが多い一年になった。


     2026年は健康を第一目標にして、バランスの良い食事と適度な運動に努め、病院との関りを減らしていかなければ、その他の願いとしては、円高になることだろう。